Stay Small | Kunihiro TAKEDA

#31 独立二年目の振り返り(エフェクチュエーションの実践)

もうすぐ年末。日を追うごとに寒くなるこの時期は、静けさがあって気に入っている。なんとなく頭もすっきりしてくる気がする。静けさの中で一年を振り返るのはなかなかよい。昨年もこの時期に記事を書いていた。

独立について #23 独立一年目の振り返り|くに

ということで、個人事業として独立二年目はどうだったのか、赴くままに振り返ってみたい。

活動の幅が広がった二年目

2025年は独立二年目ということもあり、活動を広げた年だった。ピープルアナリティクスの分析支援やコンサルティングに始まり、デジタル人材育成講師、協会イベントでの登壇、レポート作り、大学での講義など、一年目と比べて確実に仕事の幅が広がった。

一方、ビジネスに目を向けて見ると、大層な戦略や構想をもってはいなかった。「ひとり」であることを最大限生かしながら、サービスや活動の幅を広げて売り上げを伸ばす。実にシンプル。

そこには事業計画書やビジネスモデルキャンバス、リーンスタートアップ的なMVPもない。

手持ちの武器と自分の強みを活かしながら様々な活動をしていき、その結果として機会を得て仕事になったという感じで、なんとも言語化しにくい活動だった。

たとえば、今年取り組んだこれらの仕事は独立直後の事業計画書には書いていないものだ。

これらの活動の始まりは、すべて自分の外から「相談」という形で持ち込まれたものだった。大変ありがたいことである。

活動や人とのつながりが、木の枝のように次々と枝分かれして広がってきた。

これがどこまで遠くへ届くのかは正直にいって予測不可能。実に楽しい。

エフェクチュエーションとしての個人事業

振り返ってみると、独立直後よりも遥かに多くの機会と武器を手に入れている。主力となるスキルや経験は変わらずとも、その使い方が変わってきた感じだ。クライアントやビジネスパートナーから引き出していただいたこともある。

また、多くの人と出会うこともできた。新しいつながりによってすぐにビジネスになるわけではないが、時と状況がそろったときに新しい仕事につながることもあった。これはロジカルに説明できるものではないものの、独立仕事の鍵になると思う。

こうした二年目の活動を振り返ると、サラス・D・サラスバシー教授の言うエフェクチュエーションのアプローチに近いような気がする。

エフェクチュエーションは起業家が新しい事業を始めるときの手法の一つであり、「今あるリソースから何ができるか」という点を軸に事業を展開していく方法論である。

エフェクチュエーションのポイントはシンプルな5つの原則にまとめられる。

  1. 手中の鳥の原則:遠くの目標でなく自分ができることから始める。
  2. 許容可能な損失の原則:どのくらい儲けるかではなく、ここまでなら失敗してもよいと範囲を決めてやってみる。
  3. クレイジーキルトの原則:競合分析に時間をかけるのでなく、協力者を増やして一緒に価値を作る。
  4. レモネードの原則:偶然や失敗を排除するのではなく、それらを活かす。
  5. 飛行機パイロットの原則:未来は予測するものでなく、自分の行動によってコントロールするものと考えて動く。

マーケットインともプロダクトアウトも違う。点と点を繋げて新しい方向感をのんびり描くという感じだろうか。静けさも感じられるアプローチ。

このフレームを使ってこの一年を振り返ると、

という感じで、エフェクチュエーションの要素が散りばめられているようだ。

不確実性が高い状況で緻密な計画を立てるよりも、社会との対話からフィードバックを受けて進む方が自分に合っているのだろう。

その結果として、「自社データから始めるピープルアナリティクス習得プログラム」をリリースすることができた。また、DX研修講師の方も新しい展開を見せ始めている。これに加えて、チャレンジングなデータ分析に携わる機会も増えてきて学びには事欠かず、うれしい限りだ。

ビジネスとしてどうだったのか

一方、個人事業である以上、収益を考えてなくてはならない。実際に独立二年目の着地はどうだったのか。

結論から言うと、売り上げベースでは前職の収入を超える状況になった。諸経費を差し引きても良い数字感。一つの目標としていた線を越えることができた。嬉しさというより安堵したというのが正直なところ。

このように書くと「緻密な計画と活動をしていたんだね」という人もいるかもしれないが、実態は全くの逆。三か月先の予定が埋まることは稀で、長期的に体を押さえている案件であっても、注文書が届くのは仕事の直前だったりした。

もし、一般のBtoB企業のように「売上予定表」を管理したとしたら、とても胃が痛くなるような状況だったに違いない。見込み顧客や商談中の案件が積みあがらない状態だったからだ。

先に述べたように、エフェクチュエーション的な方法であって、カチッとした計画があるわけではなかった。

結果として売り上げは一つのステップを超えたが、目標管理の実現というよりも日々の活動の副産物というイメージでとらえている。

様々な仕事にめぐり合わせていただいた皆様に感謝。本当にありがたい話です。

来年に向けて

さて、気が付けば年末。もうすぐ来年が迫っている。新年になるからと言って何かを大きく変えようとは思っていない。しかし、今年のような活動を続けていれば、一年後の「現在地」は今と全く異なるものになっているだろう。

自分の関心の種に従って大雑把な方向性を持ち、様々な相談に耳を傾け、武器を磨きながら仕事を進めていく。そこで得られた着想を糧にコンセプトを考える。そうして次の枝が伸びていく。

このような形で、個人研究と個人事業を混ぜ合わせながら活動していこうと思う。