Stay Small | Kunihiro TAKEDA

#34 新しい知見を得るための私の方法

技術コンサルタントは高度な技術に加えて、その応用経験を持っていることが重要だ。一般に「技術コンサルタント」というと技術士を想起させるが、ここではITやデータなどのデジタル系のコンサルタントも含んでいる。

多くの独立技術コンサルタントは、それまでの会社員の経験を生かして活動しているのではないかと思う。私もそのうちの一人。

会社の中で働いているときに、"外でも通用するスキル"を持てるように意識していたものの、本当に生かせるかどうかはわからなかった。独立していろいろと試行錯誤した結果、想定通りだったこととそうでなかったことがある。

当初の狙いに近かったのは、データ分析の問題設定や手法選別、実施に関すること。これは、前職時代から社内外のクライアントへの支援実績もあったので、お役に立てるかもしれないと思っていた。特に人事分野(ピープルアナリティクス)はホワイトスペースでもあり、他の分野でのデータ分析とは様子が異なることもあって、うまくはまった部分があると思う。

一方、想定外だったのはデジタル人材育成研修という仕事だ。知識を教えるというのではなく、ビジネスモデルを含めた事業変革や製品戦略、あるいはBPR的な視点を含む包括的なもの。

研修というと研修講師の経験が必要と思われるが、実際のところ前職時代に講師をしたことは2度しかなかった。しかも、研修として商売をしたのではなく、別の事情で引き受けてやってみたという程度だった。しかし、過去のSE、データサイエンティスト、新規事業、ミドルマネジメントの経験をうまく生かすことができている。

このように考えると、過去20年の経験をうまくミックスしながら今の仕事を回しているということがわかる。


しかし、ふと「では5年先、10年先にクライアントに提供できる価値は何なのだろう?」という不安がよぎった。このまま過去の経験を切り売りするようなことをしていれば、いつか底が見えるのではないかと。

ここ数日、このような言い知れぬ不安を抱えながら、確定申告の準備をしていた。面倒な作業から離脱するためのちょっとした現実逃避。しかし、心の隙間に入り込んでくる問いこそ重要だったりする。

進歩の速いLLMや生成AIの細かなところには目が届きにくくなったし、むしろLLMによって今持っているスキルの価値がゼロになるリスクもある。

そもそも組織活動から離れてしばらく経ち、何か大切なことを忘れてしまうかもしれない。組織人のマインドや目線を忘れないように、一般のビジネスパーソンが読むニュースソースや、HBRなどの媒体も読むようにしているが、それだけでいいのだろうか。

考え始めるといろいろと出てきてしまう。技術もドメインの知識も膨大で、分け入っても分け入っても藪の中だ。


ひとりビジネスで体も一人。有限なリソースをどこに向ければいいのだろう?

この問いに到達したとき、「そんなの、わかりきっていることじゃないか」という言葉が頭に浮かんだ。

その答えは「目の前の仕事にダイブして学ぶ」である。

つまり、今向き合っている伴走支援の仕事、デジタル人材育成の仕事の中にこそ新しい発見と学びがある。全力で仕事をしていれば、そこには必ず学びの要素があるはずなのだ。その何かしらを意識することもあれば、無意識的に吸収することもあるだろう。

たとえば、独立して初めにいただいたピープルアナリティクスの仕事。伴走支援でなく、データ分析の受託だった。この仕事は前職時代に知り合った方からのご紹介で始まったものだった。

独立を決めて退職届を出したものの、初めのプロジェクトがあっと言う間に終わってしまい、長い夏休みを過ごしていたときにお声がけいただいた。本当にありがたい話である。

この仕事は二つの意味で意義があった。一つは、自分のデータ分析スキルが外でも通用したことを確かめられたこと。もう一つは、データを「呼び水」にして人事課題のディスカッションにつながり、さらには人事の方からアイデアを引き出し、それを分析に活かすという好循環の経験ができたこと。

短期間での仕事だったが、自分のケイパビリティを確かめつつ、ピープルアナリティクスの急所を実感したような場だった。この経験はその後のプロジェクトやセミナー発表に活かされることになった。つまり、技術コンサルタントとしての経験を新しいスキルやアイデアに昇華させることができたのだ。

このように、ひとつのプロジェクトから学ぶことは大いにある。単にプロジェクトでの仕事を「こなす」のではなく、そこで直面した疑問を解消するために本を積み上げ、クライアントと対話する。このサイクルが大切なのだろう。

あるいは、ただ一度の対話セッションでも学ぶことはある。契約につながるかどうかわからない「相談」の場面でも、その時間が相談者の価値になるように工夫をすれば、いくらでも学ぶことがあるのだ。

思えば、仕事から学ぶという戦術は、会社員のころからとっていたものだった。世間に疎く出世欲もない私が、社会と対峙する上で教科書としたのは、仕事そのものだったのだ。

そう考えると、今の伴走支援という仕事も、ピープルアナリティクスも、デジタル人材育成もまだまだ学ぶことだらけ。単に技術を使うのではなく、組織文化をどう変えるかという難題とも向き合っている。

今まで使ってこなかった技術を浸透させるには、その使い方を知るだけでは不十分。業務フローを変えて半分。業務の中に自然に技術が埋め込まれて初めてワークするのだが、その変革の鍵は組織文化が握っていることに最近気づいた。この難問と格闘する日々は確かに学びに満ちている。

プロジェクトにダイブしながら大いに学び、それを新しいアイデアにしてクライアントや社会に返していこう。そう考えると前向きな気持ちになった。